ウェブ上で紙と同じように発刊されるものはこれからも増え続けるだろう。ただし,ウェブと紙では大きく違うことがある。紙では文字や写真はインクとして紙にしみ込んでいくが,ウェブでは光として画面から飛び出てくるのだ。それによる読者が受ける違うはどんなものだろうか。
ここに来て二つのオンラインマガジン創刊のニュースが伝わった。写真を有効に使いスポーツ誌としてはクオリティーが頭ひとつもふたつも抜けている「Number」と,「FAIDAY」「週刊現代」を抱えて“それ”系の情報(^_^)が豊富な講談社の「Web現代」だ。
ウェブ上で出版社が行う事業はいくつかにわけられる。紙で出しているもののデータの一部をウェブでも提供する。紙とは全く違った独自のコンテンツをウェブ上の雑誌という形で提供する。コンテンツはいっさい出さず,雑誌書籍の紹介,宣伝だけにつとめる。もちろんユーザーに喜ばれるのは前二者で,特にWeb新潮や紀伊国屋書店のi feelなどはレベルの高いものでそれなりの効果を上げていると思われる。それらに加え,誌面で使ったクオリティーの高い写真をふんだんにウェブでも使う「Number」も,誌面の一部情報に加え音声などウェブでしか公開できないコンテンツも盛り込む「Web現代」も,ともにこれから人気になるサイトだろう。
だが,とふと立ち止まり,振り返ると…。「Number」は紙ものを読むときの落ち着く感触がなんとなくだが忘れられず(Numberに限るものではないが…),「Web現代」もウェブ独自のコンテンツの方が強く目を引いてしまう。ウェブマガジンというものは,世の中にいっぱいあるが,一般にまで広く普及しているとはどうも言えない。オンラインマガジンの光と影が,そこにはありそうだ。
ディスプレイで長い文章を読むことの苦労と疲労はみんな知っている。逆に写真が多ければいいかというと,それではダウンロードの時間が増えるだけ。紙にしみ込んでいくコンテンツと,画面が発散していくコンテンツでは,コンテンツに質の違いが要求されるのかもしれない。では,どんなコンテンツならばウェブ向きなのか。まだ誰もわからず,手探りのまま,出版社はウェブを作らなければいけない苦悩が感じられる。読者もまた,未成熟であるしね。果たして,オンラインマガジンというものは成立するのかどうか,新しい二誌に期待しつつも,見守っていきたい。
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